S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 だが和季はすでに走り去ってしまった車にはさほど関心がないようで、それよりも重要なことがあると言わんばかりに、紗夜の身体を抱いてサッと立ち上がった。

 その行動に焦ったのは紗夜である。

「! じょ、常務……ここ会社の前……!」
「ばか。今、そんなこと気にしてる場合じゃないだろ」

 公共の場で和季にお姫さま抱っこされてしまった紗夜は大いに慌てふためいた。

 だが和季は紗夜へ苦笑いを向けると、すぐに隣にいた社員たちへ向き直る。

「悪いけど、タクシー止めてくれ」
「はい!」
「あとの通報も頼んでいいか?」
「もちろんです、任せてください!」

 和季がルミリュクスの社員たちに依頼すると、彼らは二つ返事でそのお願いを引き受けてくれる。

 どうやら社内恋愛のルール改定や福利厚生の見直し、他にも和季の働きかけによる恩恵を受けている者が多いらしく、普段さほど関わりのない人々からも、和季はなかなか人望があるようだ。

 男性社員が止めたタクシーが路肩に寄ってくれると、まもなく後部座席のドアが開く。その後部座席に紗夜を座らせた和季が『奥へ行け』と合図してくるので、和季も同乗するつもりなのだと気づく。

「いえ、でも……!」
「ほら早く。帰宅ラッシュ時間なんだから、あんまりモタつくと周りに迷惑かけるぞ」
「……う」

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