S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
もしもこれがただの横断歩道ではなく、交差する車道があって信号待ちしていた車や人が一斉に動き出すタイミングだったら、もっと大きな事故に繋がっていたかもしれない。
そして和季があの場にやってきてくれなかったら――和季が身体を張って紗夜を助けてくれなかったら、今ごろ紗夜は大怪我を負っていたかもしれない。
悪い想像をすると急に指の先が震えて、また冷たい汗が吹き出し始める。今さらになって強い恐怖を感じ始める。
すると紗夜の不安を感じ取った和季が、さらに強い力で紗夜の身体を抱き寄せてくれる。
窓の縁に左肘をかけて頬杖をつきながら、紗夜の肩をぽんぽんと撫でてくれる和季の横顔に、思わずじっと魅入ってしまう。
「大丈夫だ。今夜は、俺が傍にいてやるから」
ふ、と悪戯っぽく、けれど紗夜を労わるように微笑む和季をじっと見つめる。
和季のあたたかい体温とやわらかな表情に惹かれて、顔も身体も急に火照って、どうしようもなく胸の奥が締めつけられる。
(……離れられる、わけがない)
自分はなんて馬鹿なのだろう。このぬくもりを自ら手放す選択なんて、最初から望んでいないくせに。
――それでもいつかは離さなければいけないことも、本当はわかっているはずなのに。