S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 和季と女性が他愛のない雑談に花を咲かせる様子を遠巻きに眺めていると、なんとなく違和感を覚えてしまう。

 たしかに和季は誰にでも気さくで話しやすい、明るい性格の持ち主だ。元々の知り合いならば、さらにフレンドリーな接し方になるのだろう。

 しかしそれにしても、少々距離が近すぎる気がする。常日頃から部下や同僚との間にハラスメント問題が発生しないよう留意している和季が、女性の顔を覗き込んで反応をからかうなんて、意外にもほどがある。

 おまけに『身内みたいなもの』という言い回しも少し引っかかる。『みたいなもの』ということは、実際には姉や妹や近しい親族というわけではないようだが、『それに準ずる関係ではある』ということだ。

 なんとなく胸の奥がざわつく感覚を覚えて立ち尽くしているうちに、女性が和季に別れの挨拶を告げる。

「じゃあ、ありがとね」
「ああ、またな」

 女性が和季にひらひらと手を振り、立ち尽くす紗夜とは反対の方向へ歩いていく。

 よく見ると彼女の手には真っ白な紙製のショッパーが握られており、そこに記されているのは、某イタリア高級スーツブランドの名前とロゴのようだった。

 プレゼントかな? と考えていると、ふと顔を上げてこちらへ振り向いた和季が、紗夜の存在に気づく。

「ああ、紗夜。おはよう」
「和季さん。おはようございます」

 近寄ってきた和季に朝の挨拶をすると、彼がにこりと微笑んでくれる。

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