S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
「それより、今日はホワイトデーのお返しデートだからな。紗夜にもらったチョコレートのお礼、たくさんしないと」
「え? そ、そんなにいりませんよ……?」
冗談とも本気ともとれない和季の宣言に苦笑する紗夜だが、曖昧な笑みを浮かべつつ、内心ではなんとなく話を逸らされたように感じている。
気さくで人懐こい性格の和季は、コミュニケーション能力も紗夜の数倍は高い。それゆえ和季がさり気なく話題を変えたり、逆に何気ない会話をしているようで実際には上手く情報を引き出されている、なんて状況もしばしば見聞きする。
今回も、先ほどの女性の話から上手く話題を変えられたように感じる。
自分から『高校時代の同級生』という情報を紗夜に与えたのだから、もう少し学生の頃の話や先ほどの女性との思い出を掘り下げて語ってくれるのかと思いきや、結局その話題は一瞬で終わってしまったのだ。
和季の話運びに小さな違和感を覚える紗夜だが、やはり和季の誘導にあっさりと釣られてしまう。
考えごとをしながら歩いていた紗夜の隣で和季が急に立ち止まったかと思うと、なぜか急に腰を引き寄せられた。
「紗夜。……アレどうした?」
「!」
耳元で低い声で訊ねられ、ついつい思考が停止する。こんな商業施設の往来で、そんな際どい質問をされるとは思ってもいなかったので、びく、と身体が強張ってしまう。
心臓がどきどき早鐘を打っていることと涙目になっていることを自覚しつつ、むっと和季を睨みつける。