S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

「……聞かないで、ください……」
「ごめんごめん」

 消えそうなほどの声量で答えると、和季が満足そうに頷きつつ謝罪をしてくる。

 せっかく記憶も感覚も忘れていたのだから、そのまま――せめて夜までは思い出さないよう安寧に過ごしたかったのに、ワンピースとコート越しに和季の指が腰のあたりを撫でると、ついビクンと緊張してしまう。

 約一か月前のバレンタインに〝はじめて〟を経験してからというもの、和季の紗夜に対する要求はどんどんエスカレートしてきている気がする。

 いわく『紗夜が照れて恥ずかしがってるところをたくさん見たいから』らしいが、これまでの人生でTバッグショーツなんて穿いたことすらない紗夜に、いきなりデートで身に着けてきてほしいだなんて、あまりにもハードルが高すぎる。

 今日はホワイトデーのデートのはずなのに。和季が美味しいものをたくさん食べさせてくれて、紗夜の好きなアンティークショップ巡りにも付き合ってくれて、明里家御用達の美味しいスイーツも教えてくれるというから、『それだと私が得しすぎなので、和季さんのしたいこともしましょう』なんて口走ってしまったばかりに……!

「夜も楽しみだな?」
「ちょ……ちょっと和季さん……っ!」

 紗夜の耳元で和季がとんでもないことを囁くので、あわあわと焦った声を出す。

 だがそんな紗夜の反応を見ても、和季は満足そうに微笑むだけだった。

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