S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

「あ……。お弁当箱……!」

 気だるい身体とぼんやりする頭のまま帰り支度をしたせいか、お弁当箱が入ったランチバッグをデスクに忘れてきてしまった。その事実に、会社のエントランスを出る直前になって気がついた。

 お弁当箱がなければ、明日はお弁当を作れない。一応おにぎりを持参することはできるが、お弁当箱を洗わずに一日放置するのも気が引ける。

(仕方がない……戻ろ……)

 はあ、と大きめのため息を零しつつエントランスを引き返して、三~四人が下りてきたエレベーターに乗り込む。

 元々少し残業をしていたので、時刻はすでに午後七時半すぎ。先ほど和季と課長の本郷に挨拶をして財務課を出たので、二人はまだ部署内に残っているはずだ。

 エレベーターで三階に辿り着き、廊下をゆっくりと歩いていくと、経理部のオフィスの扉が広く開いていることに気づく。

 中に入ってみると経理課の社員はすでに全員退勤していたが、パーテーションの奥にある財務課には、まだ誰かが残っているようだった。

 ありがたい、と思いながら奥へ進もうとしたときだった。

「明里くんさぁ、この間の土曜日、デートしてたでしょ」

 ふと響いた課長の本郷の一言に驚き、紗夜の足がぴたりと止まる。

 思いもよらない指摘に驚いてビクッと身体が強張ると同時に、声をかけられた人物も――和季も驚いたような声を発した。

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