S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

「あ、いえ……あれは……」

 本郷の質問を誤魔化すためか、和季が否定の台詞を紡ぐ。だがさすがの彼も少し動揺しているらしく、その先がどうにも続かない様子だった。

 そして二人の会話を耳にしてしまった紗夜も、声こそ出さないが内心パニックに陥ってしまう。

(嘘……!? まさか、課長に見られてた……!?)

 予想外の状況に、どうしよう、と慌てふためいてしまう。

 普通ならデート場面を目撃されたところでそれほど慌てることはないが、相手は他でもない後輩の紗夜で、しかもこの会社では現在、社内恋愛が固く禁じられているのだ。

 時代の潮流を鑑みた結果か、社内規定にも重い罰則を与えられるとは明記されていないが、『社員同士の恋愛を禁ずる』との文言自体は、今も当たり前に記されている。

 さらに和季は、その社則を作った経営一族の一員だ。にもかかわらず、その和季がルール違反をしている、というのは、あまりにも体裁が悪い。他の者に示しがつかない、と上司に叱責されても、文句は言えない状況だ。

 だが課長に交際関係を知られた以上、紗夜も一緒に怒られなければならない。和季一人に責任を負わせるつもりはないので、自分からも謝罪をして、与えられる処分を受け入れなければならないだろう。

< 227 / 304 >

この作品をシェア

pagetop