S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 本当は自分が罰を受けることよりも、和季が罰を受けることと、彼の立場が危うくなることを危惧している。

 バクバクと高速回転する心臓を押さえつつ、それでも二人の間に割り込む覚悟を決めた紗夜だったが、パーテーションの奥に踏み込む直前で、本郷が意外な一言を発した。

「一緒にいた女の子、すごく美人だったよね」
(……ん?)

 思い切って声を出そうとした紗夜だが、そこでピタリと動きが止まる。

 本郷が口にした一言に、強い違和感を覚えたのだ。

(すごく美人……?)

「あの綺麗な子、明里くんの彼女?」

 思いきり固まってしまう紗夜にはもちろん気づかず、本郷がさらに和季への質問を重ねる。

 その声には和季を責めるような感情は含まれておらず、むしろ和季の反応をからかいたがっているような、興味と期待の感情が含まれている気がした。

(? もしかして、本郷課長が見たのは、私じゃない……?)

『すごく美人』『綺麗な子』と外見を褒めるということは、彼が見た人物は紗夜ではない可能性が高い。

 なぜなら紗夜は財務課に配属となってからのこの一年間、本郷から外見を褒められたことが一度もない。

 彼はどちらかというと女性好きで面食いなタイプらしく、以前、お酒の席で『うちの課には俺好みの美人がいない』とハラスメントすれすれの冗談を口走って、女性社員たちを盛大に怒らせたことがあった。

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