S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
和季の仲裁もありその場は丸く収まったが、少なくとも本郷の女性の好みと紗夜が一致しないことはわかっている。
それにもし紗夜と和季がデートをしているところを見たのなら、その場で、もしくは今日の朝一番で指摘されるはずだし、注意や警告をするときも紗夜を名指ししてくるはずなのだ。
そう気がつくと、二人の前に飛び出そうとしていた紗夜も冷静さを取り戻す。
(課長が見たのは、待ち合わせ前に和季さんが一緒にいた、あの女の人……?)
二日前の状況を整理すると、ある女性の姿がぼんやりと思い浮かぶ。
そうだ、そう考えると辻褄が合う。
というか、和季と一緒にいた美人、綺麗な子、と聞くと、もうそうとしか考えられない。
おそらく本郷が見たのは和季が紗夜と一緒にいるところではなく、別の女性と一緒にいる場面だったのだ。
「……いえ。……違います……」
「!」
どうやら和季も『美人』『綺麗な子』と言われたことで、本郷が紗夜の話をしているわけではない、と気がついたらしい。
ならば交際関係を否定しても嘘ではない、と考え、素直に事実を話すことにしたのだろう。
「えー? そうなんだ、彼女じゃないの?」
「……まぁ」
「すっごい美人だし可愛い子だったのに、もったいないなぁ」
「……」
「じゃあ俺が付き合いたいよぉ……なーんてね! あはは!」
「はぁ……」
話しているうちにテンションが上がってきたらしい本郷とは対照的に、和季がいつになく気のない調子で適当な相槌を返す。