S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 和季と本郷は普段特に馬が合わないわけではなく、むしろ部下と上司しては適度な関係を築けているように思う。

 だが四十代半ばになってもプライベートがいまいち落ち着かない本郷に若干呆れる気持ちはあるらしく、先ほどからずっと和季の声が低い。

「どうやったらあんな綺麗な子と知り合えるの? やっぱり御曹司の力?」
「……どう、ですかね」

 明らかに普段より元気のない和季だが、本郷はそれに気づいているのかいないのか、さらにぐいぐいと和季に迫り始める。

「明里くんさ、あの子フリーなら、俺に紹介してよ。別に、彼女じゃないんだよね?」

 本郷が女性に対して本格的に興味を持ち始めたので、密かに話を聞いていた紗夜も、『さすがにそれは……』と呆れた気持ちになってしまう。

 たしかに大人っぽい美人に見えたが、和季の同級生ということは、彼女は今、二十七歳のはずだ。ならば本郷とは、二十歳近い年の差があるものと思われる。

 女性がかなりの年上好きでない限り、和季もいきなり二十も年の離れた相手を紹介することはできないだろう。

 本郷の要求に苦笑していると、黙り込んでいた和季が再び低い声を発する。

「それは難しいですね」

 和季の拒否を耳にした瞬間、紗夜は内心『ですよね』と頷きかけた。

 だが和季の口から零れた次の台詞に、紗夜の思考が急停止する。
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