S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 息継ぎの仕方がわからない。

 最後にキスをしたのは和季と付き合っていた二年前で、それ以降は誰とも親密な触れ合いをしていない。

 そのせいか、キスの仕方を完全に忘れている。呼吸の方法も思い出せないぐらい、男女の触れ合いの感覚が鈍ってしまっている。


「あ……ま、待っ……んん」
「っ……紗夜……」
「! あ……っ」

 息がしにくい理由を必死に考える紗夜だが、一度唇を離して顔を覗き込んだ和季がまたすぐに唇を重ねてきたことで、ふと『ああ、ちがう』と気がつく。

 紗夜が忘れている訳じゃない。和季の方が、こんなにも激しい口づけをする人じゃなかったのだ。

 昔の和季は、もっと優しいキスをする人だった。いつも紗夜の肌を優しく撫でて、力が抜けてもいいように肩や腰に腕を回して、身体をそっと支えながら紗夜の目をじっと見つめて、必ず同意を得てから口づける人だった。

 唇が触れ合ってからも紗夜の変化を気遣い、声や吐息が零れたときは唇を離して様子を確認し、わからないことや不安なことがあったらそれを和らげるように一つ一つ言葉にして宥めてくれた。

 もちろん、嫌だと言ったらすぐに止めてくれた。けれど嫌じゃない、と頷いたときはまた丁寧に口づけてくれるような、優しい愛情表現をする人だったのだ。

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