S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

「んぅ……ま、まって……」
「待たない」

 だが今の和季は、紗夜の制止を一切聞き入れてくれない。呼吸が乱れていることはわかっているはずなのに、息継ぎをする暇すら与えてくれない。噛みつくように唇を吸われて、舌同士をねっとりと絡めて、口内を探るような激しいキスばかり繰り返されている。

(こんなキス、知らない……)

 紗夜は和季としか交際経験がなく、キスの仕方もそれ以上のことも、すべて和季から教わった。

 だから彼にやり方を変えられると、紗夜は途端になにもわからなくなってしまうのだ。

 息苦しさと恥ずかしさが限界を超えたせいか、紗夜の視界の端がゆらゆらと歪み始める。するとその様子を目にした和季が、ようやく動きを止めて身体を離してくれた。

「ぁ……かずき、さん……」
「……紗夜」

 キスの合間に小さく名前を呼ぶと、同じように名前を呼び返される。

 その声の中に以前と同じような優しさと甘さが含まれているように感じて、胸の奥がじわりと疼き出す。

 キスは強引だが、紗夜を見つめる視線や身体を包む指先、名前を呼ぶ声は以前と同じだ。

 だからこの激しいキスは自身の欲望をぶつけたいのではなく、苛立ちの感情を持て余した結果なのだと理解する。

 和季はきっと、自分の手ですべてを教えてきた紗夜が、自分以外の男性からもなにかを教わろうとすることが面白くないだけなのだ。

 ――そう、思っていたのに。
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