S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

「どうして別れるなんて言うんだ?」
「ど、どうして……って」
「俺、紗夜が嫌がるようなことしたか?」
「い……いえ……」
「だったら……!」

 紗夜の腰に腕を回してそこに力を込めた和季が、身体の距離を近づけながら、じっと顔を覗き込んでくる。

 彼の表情には疑問と悔しさと切なさが滲んでいて、それを目の当たりにした紗夜は、一気に訳がわからなくなった。

(結婚を考えてる人がいながら、私とも付き合い続けたいってこと?)

 和季が結婚を決めたというのなら、それまでの『遊びの関係』はすべて清算すべきだ。

 世の中には複数の異性と同時に交際したり、結婚後も他の相手との関係を継続する者もいるようだが、紗夜にはとても受け入れられない。

 和季の不倫相手にはなりたくない。幸せな家庭を築いていく和季の姿を見続けるのが辛い。和季と、彼の相手となる女性の幸福を、邪魔したくない。

 この関係を、潔く手放したい。

「罪悪感に、耐えられません」
「? 罪悪感……?」
「!」

 紗夜の小さな呟きに、和季が疑問の声を上げる。そこで紗夜もハッと気がつく。

 思ったことを衝動的に口走ってしまったが、現時点で和季からまだなんの報告も受けていない紗夜は、和季の事情を知らないことになっている。

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