S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 一週間前、待ち合わせ場所で和季と一緒だった女性について『同級生だ』と説明されたとき、紗夜も特に疑問を抱かず、すぐに『そうなんだ』と納得した。

 そしてそれ以降あの女性の話題には一切触れていないのに、これから報告しようとしている内容を紗夜がすでに知っているのは、明らかにおかしい。

 実際は本郷との会話を聞いていたため和季の事情を知っている紗夜だが、できれば『話を立ち聞きしていた』という紗夜のはしたない行動を和季に知られたくないし、今ここでその経緯をする気にもなれない。

「っ……ルミリュクスでは、社内恋愛が禁止されていて……!」

 自分が口走った発言を誤魔化そうとした紗夜は、気がつくとそう言い訳していた。

 だが絞り出すような紗夜の答えを耳にしても、和季は不可解そうに眉を寄せるばかり。

「そんなの、今さらだろ」
「そ、それは……そうですけど……」
「これまでみたいに隠し通せばいい。大丈夫だ。あの面倒な社則は、いずれ俺が必ず変えるから」

 紗夜の動揺の声の中に不安の感情が含まれていることを感じ取ったのか、和季が優しい声音でそう諭してくれる。

 いつものように、大丈夫だ、心配ない、と紗夜を励まして、迷いを打ち消そうとしてくれる。

< 239 / 304 >

この作品をシェア

pagetop