S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 しかし紗夜には、その説得すら『婚約者がいながら他の女性との交際を続けることを納得させようとしている』ように聞こえてしまう。

 むしろいつまでも達成されない目標をぶら下げられ、これまで通りに関係をひた隠すことを、遠回しに促されているように感じられる。

 だから紗夜は「……無理です」と呟いて、首をそっと横へ振った。そんな悲しい関係、耐えられるはずがなかった。

「和季さんがよくても、私は罪悪感を覚えてしまいます」
「紗夜……」
「だからこの関係は、もう終わりにしましょう」

 強制的に断ち切るような言葉を告げると、和季が眉間に皺を寄せて表情を歪める。

 その仕草には『納得できない』『理解できない』という感情がはっきりと浮かんでいて、それを表出するように拒否の台詞を紡がれた。

「受け入れない、と言ったら?」

 和季の静かな問いかけに、視線を落としたままそっと目を見開く。

「別れたくない。離れたくない。……俺は、紗夜を手放すつもりはない」

 拒否の言葉とともに腰を抱く指に力が籠ると、紗夜の決心もぐらりと揺れる。

 心のままに頷いて、『私も』と言ってしまいたい衝動が芽生える。

 ――それでも。

「本当に、それが別れたい理由なのか? もし他になにか理由があるなら……」
「本当です」

 紗夜が首を振ると、和季の指先がピクリと跳ねた。

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