S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
「ああ。今日のはスパイからの報告だな」
「え……? なんですか、それ」
紗夜の質問を耳にした和季が、さらりととんでもないワードを捩じ込んでくる。
なんとなく偶然じゃないような気がしていたが、まさか紗夜を監視する存在がいるとは思わず、目を丸くして和季の顔を凝視してしまう。
だが今の彼には、それ以上に重要な確認事項があるらしい。
「それより俺は、どうして紗夜が俺を避けるのか知りたい」
「!」
和季がずいっと顔を近づけてくるので、思わずびく、と飛び跳ねながら身を引いてしまう。
するとまた紗夜が逃げると思ったのが、和季が強い力で紗夜を抱き込んできた。
「この前聞いたときは、嫌いじゃないって頷いてくれたよな?」
「……。……嫌いなわけでは、ありません」
和季の鋭い視線に居たたまれなさを覚えて、そろりと目を泳がせる。
もちろん嘘は言っていない。紗夜は和季を嫌いになったわけではないし、本心では避けたいわけでもない。
しかしだからと言って、『私もあなたが好きです』と告げられるはずもない。
「けど、あなたには婚約者がいるでしょう」
「……は?」
紗夜の問いかけを耳にした和季が、不可解そうな声を発する。
そっと顔を上げて彼の表情を確認してみると、眉間には深い皺も寄っていた。