S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
「またそれか。誤解は解けたと思ったのに、なんで……」
和季が心底呆れたようにため息をつくので、一瞬シュンとしてしまう。
だが紗夜が感じている不安を理解してくれないのは困るし、このまま永遠に離してくれないのもまた困る。
本当は今この瞬間だって和季の婚約者に対して申し訳ないと思っているし、彼の浮気に加担しているようでひどく居心地が悪いのだ。
だから紗夜も覚悟を決める。
和季の遊びには付き合えない、とはっきり終わりを告げること。あの日、勝手に話を立ち聞きしてしまったこと。すべてが嘘というわけではないが、別れの理由を『社内恋愛禁止規定』のせいにしてしまったこと。
――これらを告げると、きっと和季の方が紗夜を嫌いになってしまうだろう。
今は遊び相手としてちょうどいいと思っていても、そんな面倒くさいことを言い出すのならば、紗夜じゃなくていい、紗夜じゃない方がいい、と思うはずだ。
けれどそれでもいいから……嫌われてもいいから、もう楽になりたかった。
和季のぬくもりを恋しく思いながら、いつか突き放される瞬間に怯え続けたくなかった。
これ以上、和季を好きになるのが辛かった。――だから。
「二年半前」
紗夜がぽつりと呟くと、和季の指先がぴくりと跳ねる。
その温度と振動を感じた紗夜は一度言葉を切ったが、和季がなにも言わないので、そのまま話を続けることにした。