S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 紗夜自身もここで止めたらまた怖気づいて、また自分の気持ちを言えなくなってしまう気がした。

「ホワイトデーの少し前……会社の人に見られないように遠くまでお出かけしたこと、覚えてますか?」
「ああ、もちろん」
「その週明けに、明里常務と本郷課長が話しているのを、偶然聞いてしまって……」

 紗夜の説明を聞いた和季が、そっと息を詰める。どうやら彼もあのときの会話を記憶しているらしく、少し驚いたように目を見開いた。

「本郷課長に『すごく綺麗な人とデートしてたでしょ』『あれ、彼女?』って聞かれて、和季さん『違います』って答えてましたよね」
「!」

 最初に本郷の指摘を聞いたときは、紗夜も『内緒で付き合っていることがバレてしまった』と大いに焦った。

 だが『綺麗な人』という本郷の一言から、彼が見たのは紗夜じゃない別の相手だと気がついた。

 もしも紗夜と和季がデートをしているところを見たのなら、本郷は紗夜を名指しして指摘してくるはずだからだ。

 ――ということは。

「本郷課長が言っていた『綺麗な人』『すごく美人』って、私とのデートの前に会っていた女性のことですよね?」

 本郷が目にしたのは紗夜と和季が一緒にいるところではなく、紗夜と会う前の、別の女性と会っていたところだったのだろう。

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