S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
だが当時の和季は、まだその女性と交際関係にも婚約関係にも至っていなかったため、上司から『彼女?』と聞かれた彼は、素直に『いえ』『違います』と答えた。
「和季さん、課長に『彼女じゃない』って答えてました。でもそのあとで、『結婚を考えている』って……」
和季の回答を聞いた本郷は『どういうこと?』と不思議そうな様子だった。
もちろん紗夜も意味不明だったが、すぐにその意図に気がついた。
和季の本命は『簡単には付き合えないが将来を考えている』あの女性で、紗夜は『今だけ付き合っている遊び』の存在だったのだ、と。
「和季さん、婚約者なんていないって言ってましたけど、本当はあの人と結婚するつもりで……!」
「ストップストップ、ちょっと待って」
俯きながら捲し立てる紗夜に焦ったのか、和季が急に大きな声を出して紗夜の話を遮った。
ハッとした紗夜が顔を上げて和季の顔を見つめると、左の親指で左のこめかみを押さえた和季が、はあぁー……と盛大なため息を零した。
「順番に説明させてくれ」
「……」
「まず、あの場で『違う』と答えたのは、俺が悪かったよ。けど、あの時点では社内恋愛が禁止されてただろ」
和季の確認にゆっくりと頷く。
それはもちろん紗夜も理解している。