S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
今は和季のおかげで完全に撤廃されたが、二年半前のあの日はまだ、ルミリュクスには『社内恋愛を禁ずる』という鉄の掟が存在していたのだ。
「最初は本郷課長に紗夜との関係を勘づかれて、探りを入れられてると思った。だから『違う』と答えた。バレたら俺か紗夜のどっちか、なんなら両方が処罰の対象、最悪、祖母さんに告げ口される可能性もあったからな」
「……」
それはたしかにそうだ。もしも紗夜が和季と同じ状況に陥ったら、そこに関しては同じように答えるだろう。
もちろん上司に嘘をつく後ろめたさはあるが、それ以上に、秘密の交際が知れ渡ってしまったときの影響が大きい。
特に紗夜は入社一年目をようやく終える頃の一般社員であるのに対し、和季は将来が約束されている明里家の御曹司だ。
なにかあったときにばっさりと切り捨てられて終わるだろう紗夜と異なり、彼の場合は後ろ指を指される時間がじわじわと続く。
それはたしかに可哀想かも……と考える紗夜だが、そこで和季が、ふ、と表情をゆるめた。
「けど話してるうちに、課長が俺と一緒にいた相手を紗夜だと思ってなくて、会社とは関係のない相手だと思ってることに気づいた」
「……え?」
和季の説明に瞠目する。すぐには意味が理解できず、思わず間抜けな声を発してしまう。