S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

「え、ちょっと待ってください。そんなわけないですよね?」

 予想外の言い分に力が抜けかけた紗夜だが、すぐに我に返って彼の主張を否定する。

「いくらなんでも、課長が同じ課の部下に気づかないはずがないでしょう」

 たしかに経理部財務課の課長である本郷は、部下の行動や変化を細やかに観察するタイプではない。

 日々の仕事さえきっちりこなしていれば、部下がどんな服装やメイクをしていても、デスクの上になにを置いていても、まったく気にしないような性格なのだ。

 しかしいくら無頓着な本郷でも、毎日のように顔を合わせている部下の存在に気づかないわけがない。

 まして一年目の紗夜と指導係だった和季は、常に隣同士にいたのだ。いつもと同じ組み合わせなのに、場所が街の中になり服装がスーツから私服になったというだけで、和季の隣にいる相手が紗夜だと気づけないはずがない。

 紗夜はそう思うけれど。

「いや……それ、本気で言ってるのか?」

 紗夜の意見を聞いた和季が、「あのなぁ」と呆れたように肩を竦める。

「紗夜は仕事のときとデートのとき、全然違う外見してるぞ」
「え……えぇ……?」
「紗夜、職場では基本的にずっと眼鏡かけてるし、メイクも髪型も自然体だし、服装もシンプルだろ。だから休日に会社の外で見かけても、周りはまったく気づかねーんだよ」
「……」

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