S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

真実の結び目をほどいて


 愕然とうなだれる和季の姿に首を傾げていると、彼が思いもよらない呟きを零した。

「けどだんだん、課長が紗夜を『美人だ』『可愛い』って褒めることに腹が立ってきて」
「……え?」

 和季の愚痴があまりにも意外だったので、思わず驚きの声が漏れる。

 すると紗夜の表情を一瞥した和季が、当時の苛立ちを思い出したように細いため息をついた。

「相手が紗夜だと知ったら、課長は紗夜に興味を持つだろうと思った」
「え、えぇ……?」

 憮然とする和季の胸の内を聞いても、紗夜は『まさか、そんなことはありえない』と思うしかない。だが彼は本郷の手のひら返しを本気で心配していたらしい。

「社内恋愛禁止の規定はいずれ廃止するつもりだったが、解禁になった瞬間に本郷課長にアプローチされたら困る。けど俺も、二週間後には異動することが決まってただろ。だからあの人から遠ざけるために、紗夜も財務から経理に異動させたんだ」
「えっ!? あ、あの急な異動……和季さんの指示だったんですか!?」

 和季の話がいきなり別の話題に飛んだことで、二年半前の衝撃を思い出す。

 和季は人事部へ異動になってしまうが、紗夜は一年目で彼から学んだことを活かし、二年目からも引き続き財務課での仕事に励もうと思っていた。

 だがそんな紗夜に言い渡されたのは、同じ経理部ではあるものの、それまでとは異なる経理課への異動だった。

< 253 / 304 >

この作品をシェア

pagetop