S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 もちろん普段の仕事は抜かりなくこなし、さらに二週間後に迫った自身の異動の準備も同時に進めていた。

 それでもどうにか状況を整えられたので、和季の口から紗夜に説明と報告をするつもりだった。だがそこで紗夜から別れを告げられるとは、まったく想定していなかったという。

 はああぁ、と盛大なため息をつく和季の顔をじっと見上げる。

 彼の説明で、本郷と話していた『女性』について勘違いしていたこと、和季が紗夜のために動いてくれていたことはわかった。

 だが紗夜はまだ一つ、大きな疑問が消えていなかった。

「あの……和季さん、本郷課長に『結婚を考えている』と説明してましたよね?」
「ああ。もちろん、それも本心だ」

 和季がさらりと言い放った一言に「え」と驚きの声が出る。しかし和季はそんな紗夜の困惑をあっさりと受け流してしまう。

「万が一紗夜だと気づいても、手を出したらタダじゃ済まさないからな、って牽制しとく必要はあるだろ」
「え……?」

 和季がふん、と鼻を鳴らすが、紗夜の困惑はさらに深まるばかり。

「いやいや……付き合ってたったの三か月で、なに考えてるんですか……?」

 そう。実は和季のあの発言が、紗夜が『自分の話をしている』と思えなかった最大の理由だ。

 当時の紗夜と和季は交際を始めて三か月にも満たない、まだまだ未熟な関係だった。

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