S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 また当時のことを思い出したのだろう。あの日の絶望を思い出したように和季が盛大なため息を零す。

 おそらく和季も、紗夜の告げた『別れの理由』が本心ではないことを感じ取っていたはずだ。

 もちろん社内規定違反も心に引っかかる要因ではあったが、それがすべてではないことも頭のどこかでは理解していて、だからこそ本当の理由を言わずに自分の傍から離れようとする紗夜に不満を抱いた。

 だが頑なに口を閉ざして本音を言わない紗夜に迫っても、心が離れていくだけだと思った。だから一歩引いて、一度は紗夜の希望を受け入れることにした。

 ただし全面的に受け入れてしまったら、もう二度と紗夜を手に入れられなくなる。だから和季は先手を打って、紗夜の告げた理由を真正面から潰すと宣言した。

 ――そして二年後、和季は本当に『社内恋愛禁止ルール』を撤廃した。紗夜に約束した条件を整えることで、再び紗夜に触れる権利を手に入れたのだ。

「ルールを変えて、プライベートではできるだけ近くで過ごして、最近また俺を気にしてくれてる、って思ってたのに。なんでまた急に距離を置こうとするんだ?」
「……それは」

 和季の問いかけにそっと俯く。

 紗夜の頭の中で和季の隣に立つのは、いつだってあの美しい女性だ。

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