S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
愛の言葉を絡める
「ルミリュクスの受付に、明里常務の婚約者が訪ねてきた、って」
「ん?」
紗夜がぽつりと呟くと、和季が不思議そうに首を傾げる。最初はなんのことかわからなかったようだが、紗夜が、
「あの人、デートのときに会った人ですよね?」
と訊ねたことで数日前の出来事を思い出したらしく、和季が「ああ」と低く頷いた。
「ミサキのことか」
和季が女性の名前を呟いたので、再びずきりと胸が痛む。やはり名前で呼ぶような間柄なのだ、と気づくと、現実を突きつけられたような心地を覚える。
「……階段で、抱き合ってるところを見ました」
「なんだ、見てたのか」
しかも紗夜が決定的な瞬間を目撃したことを告げても、和季の態度はけろりとしたもの。
完全に開き直られているのか、それとも彼にとってはその距離感が普通すぎて最早なにも思わないのか、と勘繰ってしまう。
紗夜が密かにしょんぼりしていると、和季がふう、と短いため息を零した。
「あれ、あの日一番マシな転び方だったところな。一番ひどかったのは、副社長室に入った瞬間に兄貴の秘書と思いきりぶつかったところか」
「え」
苦笑い交じりの和季の説明に、紗夜の動きがぴたりと止まる。ハッとして顔を上げると、目が合った和季がくすくすと笑い出した。