S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

「ちなみに『ミサキ』は名字だ。本名は三崎 菜穂子(みさき なほこ)。俺は今も昔も、あいつの下の名前を呼んだことはないぞ」
「……」

 和季いわく――和季が高校三年のとき、兄の唯人が自分の母校であり弟が通っている高校の文化祭へ遊びにやってきた。

 そこで和季と一緒に生徒会の仕事に励む菜穂子と出会い、彼女に一目惚れした。そこから唯人の猛アプローチが始まり、菜穂子の高校卒業と同時に交際を始めることになったという。

 しかし父が事業に失敗し実家が倒産してしまった菜穂子は、唯人に別れを告げるとそのまま連絡を絶ち、行方をくらませてしまった。以降数年に渡り唯人とも和季とも連絡が取れない状態にあったらしい。

 だが三年ほど前にふと再会したことがきっかけで再び唯人のアタックが始まり、その後も紆余曲折あったが、最近ようやく二人の結婚が決まったとのこと。

 紗夜が菜穂子を見かけたのは、ちょうど唯人と菜穂子の再交際が始まったばかりの頃だった。あの日、和季は商業施設で偶然会った菜穂子から『唯人さんにプレゼントがしたいから、参考意見がほしい』とせがまれたため、ほんの二~三分だけ買い物に付き合ったのだという。

 あのとき和季がさり気なく話を逸らしたのは、たとえ相手が弟でもあっても、唯人の嫉妬には容赦がないから。

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