S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
また和季を信じてもいい。彼を好きになってもいい――そう教えられたような気がして、ほっと安堵の息をつく。
だが安心感を覚える紗夜とは対称的に、紗夜の誤解を把握した和季は、なんとも不満そうな様子だった。
「なるほどな。つまり紗夜は、ずっと俺が二股するような男だと思ってたってことか」
「! い、いえ……そんなことは……っ」
――ない、とは言い切れない。
たしかに紗夜は、和季が紗夜と菜穂子を両天秤にかけていると考えていた。
否、正直なところ『二股』とすら思っていなかった。
菜穂子が『本命の婚約者』で、紗夜が『遊び相手』なのは明白だった。生真面目でお堅い性格の紗夜の口から社内恋愛の秘密が漏れる恐れはなく、しかも恋愛のすべてを自ら教えたことから扱いが楽というだけで、和季にとっては比べるまでもない存在なのだと認識していた。
だが考えてみれば、これ以上ないほど失礼な話だ。
いつも真剣に『好きだ』と伝えてくれて、紗夜のために約二年で本当に社則を変えてくれて、仮住まいとはいえ紗夜の傍にいようと隣の部屋まで借りてくれて、峰木や陽太相手に嫉妬心を剥き出しにしてくれる和季の気持を疑うなんて。
和季の愛情を、信じきれないなんて。
自分の心の弱さが原因で、和季に失礼な態度を取ってしまったことを反省する。