S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 謝罪の意を示すため、一度和季の腕から離れてその場に平伏するつもりだった紗夜だが、実際には和季の上から降りることは叶わなかった。

 和季が紗夜を抱く腕にさらなる力を込めてきたからだ。 

「ていうか、俺さっき『紗夜と結婚したい』って言ったのに、無反応なのか?」
「! え……えっと……」

 和季は紗夜の失礼な態度や考え方には怒っていないが、その代わり別のことを気にしていたらしい。

 さり気なく結婚願望を主張されたことで言葉に詰まる紗夜だったが、和季はすぐにその態度を翻した。

「ま、いいけどな。プロポーズは、改めてちゃんとしたいし」

 どうやら和季は、今この場で紗夜に頷いてもらおうとは思っていないらしい。

 むしろ大事な気持ちを伝えるために相応しい場所とタイミングを用意するつもりなので、今はなにも答えなくていい、と言わんばかりだ。――ただし。

「けどその前に、また俺の恋人になってほしいな」
「……!」

 もっと自分を知ってほしいし、紗夜を甘やかす機会がほしい。二年前にできなかったことの続きもしたいし、この二年間で触れ合えなかった埋め合わせもしたい。

 そのために、まずは『恋人』としてこの手を取ってほしい。――そんな気持ちを伝えるように、和季が紗夜の頬を優しく撫でる。

「もう社内恋愛は解禁になった。俺と紗夜は、堂々と付き合える」

 和季が自信満々に胸を張るので、反射的にふるふると首を横に振ってしまう。

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