S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 もちろん和季の気持ちは嬉しいが、紗夜にはまだそこまでの覚悟ができていない。

「堂々とは、無理でしょう……」
「無理じゃないだろ。俺は会社中に『紗夜は俺のものだ』と宣言したい」
「で、でもあなたは常務取締役で……!」
「紗夜」

 焦りと照れ隠しのまま彼の役職名を呼ぶと、すかさず低い声で制止される。

 その声と表情には怒っている様子も悲しんでいる様子もなく、どちらかというと紗夜を甘やかしつつからかいたい、という感情が滲んでいる。

 ――ああ、この笑顔にはどうしたって敵わない。

 和季に優しく微笑まれて、愛おしげな声で名前を呼ばれたら、紗夜はもう白旗を振るしかなくなってしまう。

 どんなに無茶なお願いにも、どんなに恥ずかしい命令にも、きっと応えたくなってしまうのだ。

「名前を呼んでほしい。可愛い恋人には、いつだって名前で呼ばれたいだろ」
「……和季さん」

 紗夜がおずおずと答えると、和季がそっと表情をゆるめる。そのいつになく嬉しそうでありながらとろけるように甘い笑顔を見つけると、紗夜の胸もきゅん、と高鳴る。

 そっと身を屈めてきた彼を受け入れるように腕を伸ばすと、これまで以上に強い力でぎゅっと抱きしめ返される。

 和季の抱擁に身を預けるように身体の力を抜くと、ほどなくして降りてきた柔らかな唇にゆっくりと唇を塞がれた。

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