S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
S系彼氏の溺愛宣言
アカリグループが今夜貸し切りにしたホテルの大ホール内にいるのは、ほとんどがルミリュクスに勤務している一般社員だ。
いつものスーツやオフィススタイルではなく、華やかな装いに身を包んだ顔見知りたちの姿を眺めては、ほう、と感嘆の息を零す。
もちろん紗夜も、いつものようなスカートにブラウスを合わせてカーディガンを羽織っただけのシンプルなスタイルではなく、可愛らしいコーラルピンクのパーティードレスを身に纏っている。
メイクも仕事のときとは異なるやわらかい色合いを選んだし、当然、パソコン作業用のブルーライトカット眼鏡もかけていない。
紗夜が眼鏡をかけていない姿がよほど珍しいのか、先ほどからすれ違う人たちがちらちらとこちらに視線を向けてくる。
紗夜の変化をまったく気にしていないのは、紗夜の隣で自分のお皿に料理をのせている、仲良しの莉乃だけかもしれない。
「まさか副社長が、社員向けに婚約発表パーティーを開くとはね」
莉乃が白い皿の上にピンチョスを並べながら、感心したように頷く。
そう――今夜はアカリグループの社員たちに、副社長である明里唯人が自分の妻となる女性をお披露目する『婚約発表パーティー』だ。
和季と同様、唯人も新卒で一般社員としてルミリュクスへ入社し、複数の部署で現場の経験を積んだのち取締役に就任した、という経緯を持つ。
ゆえにお世話になった人、結婚の報告をしたい人が社内に数え切れないほどいるが、その全員を結婚式や披露宴へ招くのは難しい。