S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 その発言に莉乃はもちろん、周りにいた人たちも目を真ん丸にして驚いていた。だが一番驚いていたのは、間違いなく紗夜だっただろう。

 笑顔で『じゃあ、あとでな』と言い残して立ち去っていく和季に文句を言う暇もなく、一人その場に取り残された。

 興奮気味の莉乃に詳細を伝えたのはその場ではなく後日二人で出かけたときだったが、ともあれ和季の襲来のせいで、あっという間に会社中に関係が知れ渡ってしまった。

 明里常務が社内恋愛規定を廃止したのは、経理課の深田紗夜と堂々と付き合うためだったらしい、という的を射すぎている憶測とともに。

 これまで関係を隠していた理由を添えて事情を説明すると、莉乃は紗夜の考えをすんなりと受け入れてくれた。

 ただし彼女は一つだけ大きな誤解をしている。

「でも、莉乃ちゃん。私、別に和季さんと結婚する予定はないよ……?」

 それは紗夜と和季が、すでに将来の約束をしている、ということ。先ほど挨拶を終えた唯人と菜穂子のように、近い未来、紗夜と和季も社員に向けて婚約を発表するのだろう、と考えていることだ。

 だが紗夜と和季の間には、結婚の話なんて出ていない。和季の口からかなり先の予定を聞かれたり、『プロポーズは改めてちゃんとしたい』と言われたこともあるが、あれから明確に『結婚』の話をされたことはないのだ。

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