S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
いつも二人の手の上で転がされている気がする紗夜だが、結局はその笑顔に絆されて、小さな悪戯を許してしまう。人徳の成せる業だ。
「でも、そうね。紗夜には瀬戸よりも常務の方が似合うと思うわ。それはもう、段違いに」
その人徳者たる莉乃が、ふと過去のやりとりを思い出したように腕を組んで、うんうんと頷く。
莉乃が口にした名前から、そういえば最近まったく顔を合わせていない同期の男性社員の姿を思い出す。
「瀬戸くん、優しい人だと思うけど」
「悪い奴だとは思ってないわよ? ただ女癖に難ありってだけで」
莉乃が陽太の素行、特に女性の扱い方について厳しい指摘をするので、思わず苦笑いを零してしまう。それについては紗夜にも思うところがあるので、擁護はできない。
だが陽太本人にも言い分があるらしい。
「おーい? 西島~~?」
「!」
背後から少し怒っているような男性の声が聞こえたので、ハッと我に返って後ろへ振り返る。
するとそこに、いつものビジネススーツではなくカジュアルスーツに身を包んで、前髪を綺麗にセットした陽太が立っていた。
「瀬戸くん……!」
今夜のパーティーの参加は完全任意だが、社内交流、および系列会社であっても普段はあまり関わりのないアカリリホームズの社員との交流も兼ねているためか、営業部に所属する社員は特に参加率が高いと聞いている。人の集まるところが好きらしい陽太も、喜んで参加したのだろう。
ただし今の彼の表情は、少し固い様子である。