S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
「誤解を招くようなこと言うなよ」
「あら、聞こえてたのね。失礼失礼~」
「……ったく」
莉乃がからからと笑いながら陽太の文句を受け流すと、彼もはぁ、とため息をつく。しかし不貞腐れるような表情を見せる陽太も、実は本気で怒っているわけではないらしい。
それよりも、今すぐ話題を切り替えることで紗夜と莉乃の意識を逸らす方が賢明だ、と判断したらしい。
陽太が気を取り直すように咳払いをして、紗夜の方へ向き直る。
「深田、常務と付き合ってるんだって?」
「!」
陽太の問いかけを耳にしたことで、紗夜の肩がぴくりと跳ねる。
和季とのプライベートな会話を直接見聞きしたのは莉乃と一部の社員のみだったが、そのやりとりはあっという間に噂になったので、陽太も事情を把握しているのだろう。
「え……えっと……」
「あー、いいよいいよ、言わなくても」
以前、和季に迫られる様子を電話越しに聞かれていたこともあり無性に恥ずかしくなる紗夜だが、陽太はすぐにひらひらと手を振って紗夜の返答を遠慮した。
「顔見たらわかるし」
「!」
陽太の一言に再びギクリと緊張する。
顔を見たらわかる、というのは、紗夜の感情はすべて表に出てしまっている、という意味だろう。
その事実に気がつくとさらに恥ずかしくなって、慌てて両手で顔を隠す。頬に触れる手のひらがやけに熱いのは、きっと気のせいではないだろう。
なにも言えなくなった紗夜が顔を押さえたまま俯いていると、陽太が再びため息をついた。
「はぁ……こんなに可愛いって知ってたら、もっと真剣にアプローチしたのにな」