S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 つまらなさそうに唇を尖らせた陽太が、さらに文句を重ねてくる。

「ていうか、化けすぎだろ。言われなきゃ、誰も深田だってわかんないって」
「え、そんなに……?」
「うん、全然ちがう」

 陽太の指摘に顔を上げると、彼が真面目な表情で頷く。

 紗夜にとっては眼鏡をかけている顔もかけていない顔も『自分の顔』でしかないのだが、他人にはまったく違う人物に見えるらしい。

 そんなまさか、と思う紗夜の横で、莉乃がフフンと自慢げに鼻を鳴らす。

「紗夜は私とデートするとき、いつもこうよ?」
「……マジか」

 勝ち誇ったような莉乃の笑顔に、陽太が驚愕の視線を返す。

 その後も「女子って怖ぇな」「そこはすごいなって言うところよ?」「いや、西島はいつも通りだけど」「私はいつも可愛いのよ」と他愛のない雑談をする二人を、微笑ましい気持ちで眺める。

 とはいえ、他人から完全な別人のように認識されているのは、やはり気になる。

 内心『やっぱり仕事中も眼鏡しない方がいいのかな』『画面見るときだけかけるべき?』と考えていると、莉乃との会話が途切れたタイミングで、陽太がこちらへ振り返った。

「深田、あのさ」
「?」

 陽太から真剣な表情で名前を呼ばれ、紗夜の思考がぴたりと止まる。

 不思議に思って首を傾げると、紗夜の顔をじっと見つめた陽太が、意を決したように口を開いた。だが――

「もし明里常務と別れることになったら、そのときは」
「絶対ないぞ、そんなときなんて」

 陽太が最後まで言い終わらないうちに、紗夜の隣から聞き慣れた男性の声が響く。

 低く不機嫌な声に驚いて顔を上げたことで、いつの間にかすぐ傍に和季がやってきていたことに気がついた。

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