S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

S系彼氏の威嚇


「えっ!? 明里常務……!?」
「おつかれさまです、常務」
「おつかれさん」

 突然出現した和季に驚いたのか、陽太が焦ったような声を上げる。だが莉乃には近づいてくる和季の姿が見えていたらしく、さらりと挨拶を述べて丁寧に腰を折る。

「このたびは副社長のご結婚、誠におめでとうございます」
「ああ、ありがとう」

 不測の事態に直面すると慌てふためくばかりでなにも言えなくなってしまう陽太と異なり、莉乃は至って冷静だ。案外彼女のようなタイプの方が出世するかもしれない、と思ってしまう紗夜である。

 いや、予想外の展開に弱い、という意味では紗夜も同じだ。陽太ほどの動揺ではないが、紗夜も和季の顔をじっと見上げると石のように固まってしまう。

(う……フォーマルな格好だと、さらに色気が……)

 黒のスリーピーススーツを身に纏い、前髪を後ろに流した和季の姿は、恋人の紗夜でもあまり見慣れない。

 脚が長く腰の位置が高い和季はなにを着ても様になるが、正装となるとその色気は倍どころか五倍にも十倍にも感じられ、紗夜はただぽんやりと見上げることしかできない。

 莉乃と挨拶と交わす和季の顔をじっと見つめていると、和季がふとこちらへ振り向く。

「紗夜」
「! は、はい……!」

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