S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
和季に名前を呼ばれ、ぴくっと反応する。
莉乃や陽太はもちろん、すでに会社中に和季との関係を知られているのは百も承知だが、それでも人の目がある場所で会話をするのは緊張してしまう。
だがあっさりと下の名前で呼んでくるということは、和季本人は他人の視線を気にしていないのだろう。
密かに緊張しながら和季の傍へ一歩近づくと、すぐに優しい笑顔を向けられる。
「父さんと母さんが、話をしたいって」
「え……。……私とですか?」
「他に誰がいるんだよ」
想定外の和季の誘いに、再び身体が硬直する。交際の事実が知れ渡って自覚はあったが、まさかルミリュクスの社長である和季の父と社長夫人である和季の母にまで認知され、しかも呼び出しを受けるとは思ってもいなかったのだ。
思いがけず袋小路に追い込まれたような気分になりびくびくと震えると、それを見た和季がくすくすと笑い始めた。
「怯えなくていいって。俺が『真剣に付き合ってる女性がいる』って言ったから、どんな相手か気になってるだけだろ」
「で……でも……」
「顔だけ見たらすぐ帰っていいし」
「そ、そういうわけにはいかないでしょう……」
「じゃあ俺と手繋いでいくか。一緒にいる姿見せとけば、勝手に納得するだろうし」
「!?」