S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
そう言って目の前に手を差し出す和季の顔を見上げて「うぅ……」と唸る。
両親に会う、ということは、紗夜が和季の恋人として相応しいかどうか品定めをされる、ということだ。和季は気負わなくていいと言うが、紗夜はそんなはずがない、と思ってしまうし、緊張感も覚えてしまう。
しかし和季が言い出したことを引っ込めるとは思えない。ならばここは従うしかないのだろう……と腹を括ると、和季の手のひらに指先をそっとのせて、隣に佇む莉乃に向き直る。
「ごめん、莉乃ちゃん。ちょっと行ってくるね」
「はいはい。頑張ってね」
莉乃が笑顔で紗夜を送り出してくれるので、こくりと頷いて和季の手を握る。
和季も紗夜の手を握り返してくれたが、そこから一歩踏み出す前に、ふとなにかに気がついたように足を止め、くるりと後ろへ振り返る。
和季の視線の先にいたのは、ろくな挨拶もできないままその場で呆然とやりとりを眺めていた陽太だった。
「営業部の、瀬戸だっけ」
「! はいっ!」
和季に声をかけられ、陽太の背筋がしゃんと伸びる。
紗夜への甘い笑顔や莉乃との爽やかな挨拶を眺めていた陽太は、自分もなにか優しい言葉をかけてもらえるのでは、と期待していたらしい。
だが和季は自分が『敵』だと認識した相手にはとことん容赦がない。顔は笑っているのに目はまったく笑っていない和季が、陽太に向かって冷酷に言い放つ。
「俺が紗夜にフラれることはあっても、俺から紗夜を手放すことは絶対にないぞ」
「!」
「妙な勘違いしたらどうなるか……わかってるよな?」