S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 にこ、と笑顔を浮かべた和季の表情から、自分がとんでもない地雷を踏みつけてしまったと察したらしい。

 頭の先から足の爪先までガチガチに固まった陽太が、上擦った声で和季に反逆の意思がないことを宣言する。

「き、肝に銘じておきますっ……!」

 叫ぶような陽太の一言を耳にすると、和季が、フッと表情をゆるめて紗夜の肩を抱く。

 そのままなにも言わずに歩き出したので、紗夜も和季に従うように歩を進めたが、陽太は和季から返答がないことにむしろ恐怖心を駆られたらしい。

 数秒遅れてへなへなと脱力した陽太が、その場にがっくりと肩を落とす。

「せ、背筋凍った……」
「お馬鹿さんねぇ、自分から重役に目を付けられに行くなんて」
「いや、明里常務、普段あんなに怖くないだろ……!」

 背後から聞こえる陽太と莉乃の会話に、隣の和季が深いため息を零す。

 紗夜以外には聞こえない声量で『人のものに手を出す奴に優しくするはずないだろ』と不機嫌な悪態をつく和季に、思わず苦笑いを零してしまう紗夜だった。


 ◆◇◆


 和季の手からシトラスワインが入ったグラスを受け取ると、カラカラに渇いた喉を潤すために、それをそっと口に含む。

 ふぅ、と息をつくと同時に唇から零れ落ちたのは、紗夜の素直な感想だった。

「怒られるかと思いました」
「ん?」
「……和季さんの、ご両親に」
「そんなわけないだろ」

< 283 / 304 >

この作品をシェア

pagetop