S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 紗夜の安堵の感嘆を聞いた和季が、可笑しそうにくすくすと笑う。だが紗夜は、最初は本当に不安だったのだ。

 ルミリュクスの代表取締役社長である和季の父と、その夫人である和季の母は、意外にも紗夜と和季の交際に好意的だった。

 紗夜が和季の後輩であることや紗夜の普段の仕事ぶりも把握されていたらしく『経理課で頑張ってるんだってね』『いつもありがとう』と社長直々に日々の業務を労われてしまった。

 さらに和季は、両親に紗夜との馴れ初めやこれまでの経緯もかいつまんで説明していたらしく、『まあ、お袋には詳細を説明しない方が無難だろうね』と苦笑い付きのアドバイスまでいただいてしまった。

 社長の母、というのは、アカリグループに『社内恋愛禁止』の規則を作った人物である。社長ですら取り扱いが難しい相手がいる、という事実にまた怯えてしまう紗夜だが、とりあえず和季の両親が紗夜と和季の交際に反対していない、というのはありがたい。

 君は和季に相応しくない、と切り捨てられる覚悟もしていたので、今はただホッと安堵する。

 そんな紗夜の気持ちが和季にも伝わったらしい。

「うちの一族は、結婚相手の家柄にはこだわらないぞ」
「え、でも副社長の奥さま……菜穂子さんは、社長令嬢なんですよね?」
「昔はな。今は『一般家庭の普通のお嬢さん』らしいぞ。自称だけど」
「そ、そうですか……」

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