S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 和季が呆れたような表情を見せるので、紗夜もつられて苦笑いを零してしまう。

 近い将来、副社長夫人となる三崎菜穂子には紗夜も直接挨拶したが、彼女はなかなか面白い人物のようだ。

 外見はクールな印象のアジアンビューティーだが、実際に話してみると明るく茶目っ気がある印象で、紗夜のイメージする『社長令嬢』らしさはあまり感じられない。

 さらに学生時代から大のアニメや漫画好きで、現在の仕事はイラストレーター。普段は家からほとんど出ず自宅にこもってばかりなため、運動音痴と方向音痴に磨きがかかり、今夜のパーティーへの参加も相当渋られてしまった、と今夜の主役である唯人が盛大に嘆いていた。

 そんな風変わりな菜穂子でも受け入れられたのだから、紗夜が受け入れられないはずがない、というのが、和季の主張である。

「安心した?」
「え……いえ、あの……そんなことは」

 和季がからかうように顔を覗き込んでくるので、慌てて手と首を横に振る。

 紗夜と菜穂子には決定的な違いは、菜穂子は唯人の『結婚相手』だが、紗夜は和季の『恋人』でしかない、ということだ。

 近々明里家の一員となるため、菜穂子は関係者に挨拶をする必要があるが、正直、紗夜は両親への挨拶すら不要なのではないか、と考えている。

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