S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
だが紗夜の不安を聞いた和季の返答は、実にあっさりとしたものだった。
「のらなきゃ寝れないだろ」
「そ、そうですよね……!」
「まあ、そのベッド一つで一億ぐらいしそうだけどな」
「!? 怖いこと言わないでください……!」
和季がおそろしい金額を告げながら紗夜をからかってくるが、実際、本当にそのぐらいの価値があってもおかしくはない。
ざっと見回って気づいたが、ここにあるのはすべて帝政様式のアンティーク家具だ。ナポレオンの時代に流行したこの様式は、彼の権力と栄光を象徴するかのような重厚で力強いデザインと、絢爛豪華な印象を与える装飾が用いられる場合が多い。
ホテルのオーナーやデザイナーの中にアンティーク家具に造詣のある者がいるのか、それとも様式を統一したコンセプトルームを備えることで新たな客層の取り込みを狙っているのか、正確なところはわからない。
だがこんなにも希少価値の高いアンティーク家具が揃ったホテルの部屋が存在するなんて、紗夜はまったく知らなかった。
「そうだ、お風呂はどうなって……」
「紗夜」
さらに好奇心を掻き立てられた紗夜は次なる冒険へ出かけようとしたが、バスルームへ足を向ける直前で和季から足止めを食らってしまった。
「喜んでくれるのは嬉しいが、ちょっと落ち着け」
「! ご、ごめんなさい……」
目の前にやってきた和季が笑いながらくしゃくしゃと頭を撫でてくれるので、はっと我に返って恋人の顔を見上げる。