S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
いくら和季のサプライズが嬉しかったとしても、興奮のあまり彼を完全放置するのはよくない。
和季は紗夜を喜ばせるためだけではなく、紗夜と二人でゆっくりと過ごすために、この素敵なお部屋を予約してくれたのだから。
「ありがとうございます、和季さん」
「どういたしまして」
紗夜のお礼を耳にした和季が、ふ、と表情をゆるめてくれる。
その笑顔に見惚れていると、和季が急に身を屈めて紗夜の肩と脚の下に腕を差し入れ、そのまま身体をがばっと横抱きにしてきた。
「わっ……!?」
突然の浮遊感に驚き、和季のシャツを握りしめて彼の胸に縋る。だが和季は紗夜の反応に構わず、部屋の中をスタスタと歩いて先ほどの長椅子へ近づき、紗夜を抱いたままそこへ腰を下ろしてしまう。
至近距離から和季の顔を見つめた紗夜は、こちらを見下ろした彼と目が合った瞬間、そっと頬に空気を溜めた。
「座り心地はどうだ?」
「これじゃわかりませんよ」
「俺はこのぐらいの固さの方が好きだな。あとこの布地、なめらかで触り心地がいい」
「え、ずるいです……! 私も座りたい……!」
「紗夜の特等席は、俺の上でいいだろ?」
「よくないです」
むぅっと頬を膨らませながら文句を言ってみるが、和季はまったく動じていない。
くすくすと笑いながら肩を抱いた指先に力を込めてくるところを見るに、彼はまだしばらく紗夜を解放してくれないようだ。