S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
「ありがとうございます、和季さん。未熟な私ですが――どうぞよろしくお願いします」
「……ああ、よかった」
紗夜の返答を聞いた和季が、肩の力を抜いてそっと微笑んでくれる。
どんなときでも澄ました顔をして、どんな問題も易々と乗り越えていく和季だが、プロポーズとなるとさすがに話は別なのか、やはり緊張していたらしい。
はーー……と深く長いため息をつくと、すぐに手を握りながら指を絡めてくるので、紗夜もその手をぎゅっと握り返そうとした。
だがそこで、固くてひんやりとした質感を薬指の付け根に感じる。
「! え……。こ、これって……!」
固い金属質に触れたことに驚き、ハッと視線を下げてみる。
すると紗夜の左手の薬指に、見覚えのないシルバーのリングがはめられていることに気づく。しかもその指輪の中央には、まばゆい煌めきを纏った大きなダイアモンドまでのせられていた。
予想外の贈り物を見つめたまま魂を抜かれた心地で惚けていると、和季がくす、とやわらかな笑みを零す。
「俺は紗夜しか見えていない、俺が必要なのは紗夜だけだ、って毎時毎分思い出してもらうためには、指輪は絶対に必要だろ」
和季から悪戯が成功したような笑みを向けられ、二、三度瞬きをしてしまう。まさか和季が素敵な部屋とプロポーズの言葉だけでなく、婚約指輪まで用意しているとは思わなかったのだ。
「信用ないからな、俺は」
「ご……ごめんなさい……」
「冗談だよ」
どうやら和季は、紗夜に何度『婚約者なんていない』と説明しても信じてもらえなかったことを、まだ少し根に持っているらしい。