S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
6時間前に戻れたら
「も、申し訳、ありません……!」
いつの間にか力が戻って身体が動くようになっていたので、両腕を前へ突き出して和季の胸板をぐいっと押し退ける。さらに拒否の意思を態度で示すよう、首をふるふると横へ振る。
「以前のように交際したい、というのが……明里常務のお望みでしょうか?」
和季の身体から手を離すと、ずり下げられていた下着を引き上げて胸元を隠しつつ、早口で確認する。
紗夜が急に丁寧な言葉遣いになったことに驚いたのか、目を見開いた和季が静かに動きを止めた。
「もしそうであれば、私にはお応えできません」
「……は?」
紗夜が明確に拒否すると、和季が焦ったような声を上げる。
「どうしてだ? 社内恋愛禁止の社則なら、来週から無くなるだろ」
「そうではなく……!」
和季の問いかけに、もう一度首を横へ振る。
おそらく彼は、二年前に紗夜から別れを告げる際『社内恋愛禁止規定の違反』を理由として挙げたことから、そのルールさえ廃止すればすべての問題をクリアできる、と思っているのだろう。
もちろん、それも懸念事項ではあった。だが紗夜の思う一番の問題はそこじゃない。
そもそも、社内恋愛禁止の規定を過度に気にするのならば、最初に和季から『俺と付き合わないか?』『誰にも知られないよう秘密にしておけば平気だろ』と言われた時点で、きっぱりと断っていたはずだ。ルール違反なんて、最初からしなかったはずなのだ。