S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
つい最近まで社員同士の恋愛や結婚が認められていなかったのに、たった数か月で結婚となると、周囲から過去の関係を邪推されたり、あらぬ疑いをかけられる可能性がある。
しかもただの邪推や疑いではなく、本当に規定違反をしていた身なので、なおさら判断は慎重にならなければいけない。
すべての社員から祝福されることが至高だとは思っていないが、ただでさえ人から注目される身なのだから、極力後ろ指を指されないよう万全は期しておきたかった。
「恋人の時間も楽しいと思いますよ」
「そうだな」
その思いをしっかり伝えるよう和季の顔を見上げて微笑むと、彼もすぐに笑顔を返してくれる。完璧に整った和季の顔が紗夜だけには優しくゆるむのだと思うと、また幸福を覚える紗夜だ。
そのままたくさんの人が行き交う明るい街並みを歩く二人だったが、ふと思い立ったように和季が足を止める。
くん、と腕を引っ張られたような気がして紗夜も足を止めてみると、隣の和季がじっとこちらを見つめていることに気がつく。
「紗夜。俺と一緒に暮らさないか?」
「……え?」
その和季がぽつりと呟いた一言に、そっと意識を奪われる。
婚約者同士となり、いつか結婚することを誓い合った二人だが、様々な事情から詳細はまだなにも決まっていない。
当然、一緒に暮らすのもまだまだ先になると思っていたが、和季は違う考えを持っていたらしい。