S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
「と、とにかく! 用件がお済みでしたら、これで失礼いたします!」
「っ……おい、紗夜!」
慌てて話を逸らすと、右手でブラウスを押さえつつ左手を支えにして、和季の身体の下からずりずりと這い出る。
さらにソファから立ち上がって大急ぎで着衣を正すと、先ほどカーペットの上に落としてしまった通勤バッグへ手を伸ばす。
「!」
そのまま和季の部屋を後にするつもりの紗夜だったが、そこで予想外の状況に見舞われた。
後ろから伸びてきた和季の手に二の腕を掴まれたかと思うと、そのままぐいっと引っ張られて身体をくるりと回転され、正面からぎゅっと抱きしめられたのだ。
「えっ……? ちょ、和季さ……!」
「ごめん、紗夜。強引なことをして、悪かった」
紗夜が焦った声を発すると、和季がぽつりと謝罪の言葉を呟く。
「そうだよな。あれから二年も経ってるのに、急に『また付き合ってほしい』なんて言われても、困るよな」
紗夜が拒絶する本当の理由を知らないためか、和季が少し的外れな理由を添えて謝罪の意思を伝えてくれる。
だが、そうではない。紗夜は和季の提案が急すぎたから困っているわけじゃない。
しかしそれを伝えようにも、身体を優しく抱かれながら背中をぽんぽんと撫でられると、ほっと気が緩んで全身の力が抜けてしまう。このぬくもりを『嬉しい』と感じてしまう。