S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 あわあわと狼狽する紗夜だが、和季はその反応で満足したらしく、にこりと笑顔を見せるとそのままスッと離れてくれた。

(な、なにを考えているの……!?)

 しかし離れた和季が増井に声をかけ、そのまま彼らの会話が盛り上がり始めても、残された紗夜の心臓はばくばくと高速回転し続けている。

 人に聞かれてもおかしくない状況で突然プライベートな誘いを受けたせいで、紗夜はさらなる疲労感を覚えていた。

「深田先輩」
「!?」

 緊張と困惑のせいで呆然としていると、ふと隣から声をかけられる。

 びくっと飛び跳ねながら振り向いてみると、二歳年下で今年二年目となる後輩の峰木が、目をらんらんと輝かせて紗夜の顔を覗き込んできた。

「先輩って、明里常務と時期被ってるんでしたっけ?」
「!」

 峰木の質問に再び心臓が跳ねる。だが彼は先ほどのやりとりを見ていたわけではなく、雲の上の存在でありながら突然経理課に現れた和季にただただ興味津々な様子だ。

 紗夜に話しかけながらそわそわと和季をチラ見している姿を見るに、和季に強い憧れのような感情を抱いていることがわかる。まるで予期せず芸能人に出会ってしまったファンのような反応だ。

「う、うん。財務課で、一年だけ……」

 紗夜がぎこちなく答えると、峰木がぱぁっと歓喜の表情を浮かべる。しかしその答えだけでは満足できないらしく、さらなる情報を欲しているような目を向けられる。

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