S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 これ以上どう説明すればいいのか、と悩みつつも、

「明里常務は、私の教育係だったの」

 と付け加えると、峰木の目がさらにきらきらと輝き出した。

「へええぇ、すげえぇ……! いいなぁ、常務に直接色々教えてもらえるなんて……!」
「……」

 仕事以外にも色々教わってしまいました……とは口が裂けても言えない。言えるわけがない。

 余計な言葉を口にしないよう反射的に唇を引き結ぶが、峰木はそんな紗夜の様子にはお構いなしだ。

「やっぱり経理部にいたときから、仕事できる感じだったんですか?」
「そ、そうだね……」

 峰木の質問には曖昧に頷くことしかできない。

 本当は紗夜も和季の迅速かつ的確な仕事ぶりや、丁寧で熱心な新人教育の手腕を尊敬している。本心では彼のようになりたい、と思う気持ちもある。

 だが実際のところ、和季のように自身の仕事と後輩育成を完璧にこなし、さらに見えないところで経営や社会経済の勉学に励み、経営一族の一員として社交の場や人の集まる場へ赴いて人脈を広げ、自身の肉体も万端に鍛え、さらに恋人と過ごす時間もしっかりと確保する、という超人的な生活を営むのは、ほぼ不可能だと思っている。

 まして紗夜は一年目に『財務課』に配属され、経営一族の御曹司である和季から直接教えを賜ったにもかかわらず、なぜか二年目で『経理課』に異動になる、という異色の経歴の持ち主なのだ。

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