S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 課長の増井は「深田さんがすごく優秀で『経理にほしいな~』って思ったから、人事にお願いしたんだよ」と言ってくれた。だが紗夜自身は、自分があまりの落ちこぼれで財務課で不要だと思われたため、早々に異動になったのではないかと考えている。

 経理課に異動して三年目となった今はもう仕事にも慣れたが、和季の新人教育の手腕を褒める言葉を耳にするたびに、自身の至らなさを申し訳なく感じてしまう紗夜だった。

「君は?」
「!」

 峰木の質問から過去の出来事を思い出していると、すぐ傍で再び和季の声が響いた。

 びっくりして振り返ってみると、紗夜の背後に立った和季が目の前の峰木を見下ろしている。

「は、はい! 経理課の峰木といいます!」

 峰木も百七十五センチほどの身長があるので紗夜から見れば十分高いが、百八十センチを超える和季の前に立つと、対比で少し小柄に見える。

 さらに和季の質問に姿勢を正して勢いよく答える姿が、なおさら主人に従順な子犬のように見えた。

「ははは、元気いいなぁ」

 和季も紗夜と似たような感想を抱いたらしく、表情を崩して楽しそうに微笑んでいる。

 その笑顔をぼんやり見つめていると、ふと自身の腕時計で時刻を確認した和季が小さく頷いた。どうやらなにかの予定時間が近づいているらしい。

「じゃあ、二人とも頑張れよ」
「は、はい」
「ありがとうございますっ!」

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