S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
だがここで『なぜ婚約者がいると知っているのか?』『気づいたきっかけはなんだ?』と深堀りされても困る。
二年前、紗夜は和季の口から残酷な真実を突きつけられたくない一心で、黙って彼から離れる、という選択をした。
本当は『結婚を考えている女性がいるんですか?』とストレートに聞きたかったが、彼の口から肯定されて、さらに紗夜との交際はただの遊びだと突きつけられるのが怖くて、結局は聞かないまま別れることにしたのだ。
なのに二年の歳月が経過した今になって再びダメージを負うこと――そして紗夜が事実を知った経緯まで知られて和季に軽蔑されることは、絶対に避けたい。
だから適当に誤魔化した紗夜だったが、さすがに不自然すぎたかもしれない。
内心冷や汗を流す紗夜だったが、和季はこれ以上の追及しても望む答えは得られない、と判断したらしい。
「……。……まあ、いいけどな」
小さなため息をついた和季が、紗夜の手首を掴む力をそっと緩める。
しかしまだ完全に離れたわけではない。
「それより、気になるのはあいつだな」
「……え?」
ぽつりと呟いた『あいつ』の一言に反応して顔を上げると、和季がなにかに対して苛立っているような、苦々しい表情を浮かべていた。
「あの、峰木って後輩。俺の紗夜にべたべたして、腹が立つ」
和季が忌々しそうに吐き捨てた一言に、え……と言葉を失う。